一枚のパンツができあがるまで。
そこには数多くの工程があり、各分野のスペシャリストが存在します。
この記事では、製造過程に携わるクリエイターにスポットを当て、どのような想いで商品に向き合っているのかをご紹介します。
Index
●縫製:尾熊 涼子
●検品・仕上げ:今井 次子
●工場長:柿原 宏泰
●裁断士:三木 光博
●縫製:尾熊 涼子 |
Profire
尾熊 涼子
カーテン屋で定年まで勤めたのち、パレ・ナワチで再び縫製の仕事に就く。
長年の実績と経験を活かし、現在はパレ・フタバで縫製を担当。
いつまでも元気で働けるようにと、毎週土曜日はジムに通っている。
素材の特徴に合わせながら、ニット生地を縫い続ける。
-現在は縫製のお仕事をされていますが、もともとずっとこのお仕事をされてきたのでしょうか?
そうですね。最初はカーテン屋さんで仕事をしていたのですが、カーテンだけでなくピアノカバーや特殊なベッドカバーまで縫製していました。
-どのような経緯で、パレ・フタバでお仕事をされるようになったのでしょうか。
実は、一度カーテン屋さんで定年まで働き、退職しているんです。
その後、パレ・ナワチで縫製の仕事をしていたところ、パレ・フタバの今井さんに、「一緒に仕事をしないか?」と誘っていただいたことで、現在に至っています。
-長く縫製のお仕事をされているということですが、難しいと感じる部分はありますか?
ニット素材は難しいですよ。
それこそ、若いころから何年も縫製をやってきましたが、初めてニット素材を縫うことになったときは、全く縫えませんでした。
ニットは、布同士を綺麗に合わせても、縫っていくと伸びてくるのが特徴です。
そのため、縫い終わりを合わせるのが難しく、きれいに縫えるようになるまでには1ヶ月以上かかりましたね。
-長年にわたって扱ってきた仕事でも、ニットとなると勝手が違うんですね。
そうですね。なので今は生地の特徴に合わせて、ミシンの調整をしたり、手の運び方を工夫するようにしています。
決まりきった手順ではなく、商品ひとつひとつに向き合うことで、きれいな完成品が1枚ずつできるように努めています。
1ミリでもズレないように細心の注意を
そもそもニット素材は、ミシンも糸もすべて専用のものを使っているんですよ。
機械自体は一緒ですが、ミシンの付属品や糸の調整は、普通の生地を縫う仕様と比べると全く違います。
糸も、下糸はウーリーという柔らかく伸びる素材で、このウーリー糸を使うことで縫い方の調整ができるため、きれいな仕上がりの商品が完成するんです。
ニット以外では、端を処理するための糸として使われているので、こんなに大きな違いがあるんだなと最初は驚きました。
-誰でも簡単に縫えるものではないんですね
特にTAKUMIBAのパンツは、パンツのシルエットや仕様にもこだわりがいっぱい詰まっているので、工程も多く、高い技術が必要になります。
例えば、6ミリの幅で縫わなければならない所を1ミリでもズレたら、次の工程が上手く縫えない。だから1ミリでもズレないように、細心の注意を払いながらいつも縫っています。
-それでは最後に、お仕事のこだわりを教えてください。
その日に縫製するパンツの仕様書を全て頭に入れて、どういう順番で、どの工程を誰に、どのくらいのペースで縫ってもらうかを、常に考えていますね。
ステッチの幅1ミリで、商品の出来栄えは変わってしまいます。
だからこそ、きれいに縫うだけではなく、納期通りに商品を上げて、多くのお客様に良い商品を届けられるように、日々の努力は怠ることができません。
●検品・仕上げ:今井 次子 |
Profile
今井 次子
クリーニング屋での仕事を経験したのち、パレ・ナワチで検品とハンドアイロンのポジションを担当。現在はパレ・フタバで検品・仕上げのセクションを任されている。
コロナ前は、石川さんや平岡さん、尾熊さんと山登りに行くことが趣味だったが、最近は今は家でゆっくり休むのがマイブーム。
身体をリフレッシュさせて、元気にお仕事ができるようにしています。
隅から隅まで、商品をきれいに仕上げていく。
-まずは、仕上げ作業としてどのようなことをしているのか教えてください。
プレスをするのが一般的なイメージかもしれませんが、実はそれだけではありません。
商品によって、センターラインが入っているものや、ピンタックが入っているものはピシッとまっすぐに揃えます。スリットがきれいになっていなければ、それも揃える必要があります。
その他、細かいところは全てチェックしますね。ポケットのシワが出てしまっている場合は全て押さえたり、細部はハンドアイロンをかけることで、商品の隅から隅まできれいにしていきます。
-店頭にきれいな商品が並んでいるのは、今井さんのようなお仕事のおかげなんですね。
ニット素材となると、やはり独特の難しさがあるのでしょうか?
特に難しいのは、生地のシワが全く取れないときですね。
どれだけ蒸気をあてても、ハンドアイロンをかけてもシワが取れないこともあって、それをきれいな状態にするのが本当に大変なんです。
ニット素材は、その日の気候によっても扱い方が大きく変わります。
シワを取るために蒸気をあてる「プレス」という作業は、生地の特徴とその日の環境に合わせて、蒸気の温度やあてる長さを考慮する必要があるんです。
なので、商品ひとつひとつの特徴を理解するのは必須のスキルですね。
「見る」ではなく、「見つける」意識。
-商品を端正な状態にするためには、見えない工夫がたくさんあるんですね。
やっぱり、商品を一番輝いた状態でお客様に届けたいんです。
仕上げ作業は、お客様へお渡しする“商品の最後の砦”のようなもの。
だからこそ、1日中立ちっぱなしの状態でアイロンを持ち続けることもありますが、自分の目で納得できるまで商品に向き合いたいと思っています。
(今井さんの手には豆が出来ていました。)
-それでは最後に、お仕事のこだわりを教えてください。
「見る」ではなく「見つける」ことが大事かなと思います。
シワも汚れも傷も、どんな些細な点も、「見る」だけでなく、「自分の目で見つける」ことを意識していますね。
自分自身の目を信じること。その思いを持って、ひとつひとつの商品に対して、検品・仕上げを行っています。
●工場長:柿原 宏泰 |
Profile
柿原 宏泰
大学卒業後、東京のアパレルメーカーの企画室で1年半ほどパターンナーのアシスタントを経験。実際に自分でサンプルを作る技工士として修行を積む。
その後、福山へUターンし、現在はパレ・フタバの工場長に。
趣味は子どもと遊ぶこと、子どもの成長という子煩悩。
工場長になっても、基礎から改めて勉強。
-大学卒業後からアパレル業界で働かれていたということですが、パレ・フタバに入ったきっかけは何だったのでしょうか?
もともと実家が縫製工場をしていたのですが、休業になり、場所はそのままで繊維製品等のサンプル作成を5年程していました。
そんな時に、今のパレ・フタバの取引先からの紹介で、藤井さん(TAKUMIBAディレクター)から工場長をしてくれないかと話をいただいたのがきっかけですね。
-いきなり工場長とはすごいですね。その一方で、ニット素材の難しさもあったのではないでしょうか?
挑戦と失敗の繰り返しでしたよ。
東京から帰ってきて、ミシン調整の勉強を行ったんですが、はじめはなかなか上手くいきませんでした。
もともと布帛をメインにミシンの調整をしていたので、ニットのように超ストレッチの素材を縫うためのミシン調整は経験がなかったですね。
伸縮性がとても奥深いんですよ。引っ張っても切れない縫い目を理解するために、とにかく勉強と経験を積みました。
ひとつひとつの細かい仕様に向き合う
-そのなかでも、一番難しかった素材を教えてください。
マスクの生地を縫ったときですね。
姉妹ブランドのWe’llからマスクを出しているんですが、生地が旭化成と共同開発した特殊な素材なんです。
ミシンを走らせると生地が動いてしまい、まっすぐに縫うというのがとにかく難しい。ミシン目の調整をするのは、未だに苦労しますね。
-素材や商品によって仕様が全然違うんですね。
仕様はかなり細かいですね。TAKUMIBAの仕事は本当に細部までこだわっているので、仕様の確認は徹底的に行っています。
先ほどのお話にもつながりますが、ミシンの調整一つで生地の縫い目が大きく変わってしまう。だからこそ細かいディティールを大切にしています。
-それでは最後に、お仕事のこだわりを教えてください。
自社工場の品質が一番である。という軸をぶらさないことですかね。
いいものを作るという思いというか、他の工場には負けないという意思は大事にしています。
あとは、工場長として、働いてくれている職人の技術を向上させたいという思いもあります。
「縫製するのが楽しい」と思ってもらえる現場づくりを、工場長という立場として、これからも常に考えていきたいですね。
●裁断士:三木 光博 |
Profile
三木 光博
高校で進路を決める際に繊維業を勧められ、営業職として作業着の会社に就職。
研修中に工場全般の工程を学んだあと、最終的に裁断の仕事をメインで7年間経験。趣味は自転車やウォーキング。健康志向です。
原反のクセを職人の目で判断
-まずは、裁断士とはどのような職業なのか教えていただけますでしょうか。
簡単に言うと、型紙に合わせて服地を裁断する技術者のことですね。
裁断がいかに上手くいくかで、縫製する方の縫いやすさも変わってきます。
-生地を裁断して、縫製者に渡すというお仕事なんですね。
そうですね。あとは、生地の余りをどれだけ減らせるかということも求められます。
実は裁断方法は、時代の変遷によってアナログからデジタルに進化しているのですが、昔は生地の上に紙を置いて、実寸のパターンを手書きで線をなぞって描いていました。
量産するときは、いかに効率よくパターンを配置するか、パズルのように頭の中で組み立てながら行ってましたね。
それが近年ではデジタルになり、PC上でパターンを何度でも置き換えることができるようになりました。
これによって生地の余りを減らし、効率的に仕事ができるようになっています。
-そういった技術の進化があるなかでも、ニット素材は難しいのでしょうか。
やはり特殊な生地であることは感じます。
ハイテンション素材と呼ばれるニットは、裁断するために生地を並べても、伸縮性があるので縮みが発生してしまうんです。
原反でクセがついてしまっている場合は、裁断する過程で矯正していくことができないんですね。
だからこそ、今までの経験値を元に原反の良し悪しを自分の目で判断して、どこまでが製品となる生地として使えるのか、許容範囲を出していく技術が必要になります。
完璧な一枚をつくるためにバトンを渡す
-原反の時点で判断するのは、プロでないとできない業ですね。
そうかもしれません。ただ、これは自分の技術だけではなく、裁断・縫製・仕上げ、すべての方の技術の結晶だと思います。
原反のクセが強く、これは縫製が難しいのでは?と思ったときでも、縫製や仕上げの技術できれいな見た目ができあがっているんです。
TAKUMIBAのこだわりのシルエットと穿き心地が実現しているのは、完成までにあるすべての工程で最大限の技術が発揮されていることがわかりました。
-それでは最後に、お仕事のこだわりを教えてください。
「早く丁寧に」というところが基本であり、重要な部分だと思います。
縫製の方の縫いやすさや、次の工程に間に合うかどうかを考えながら仕事をしています。
次に誰かにバトンを渡すとイメージすることで、全工程のクオリティが上がり、今のTAKUMIBAの商品が完成していると思います。